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旭川地方裁判所 事件番号不詳 判決

右両名に対する電信法違反被告事件に付当裁判所は檢事渡〓礼之助関與審理を遂げ左の通り判決する。

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主文

被告人石水ハツヱを罰金百円に被告人渡〓千鶴を罰金五十円に処す。

被告人等が右罰金を完納することが出來ない場合は被告人石水ハツヱを二日間渡〓千鶴を一日間夫々労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人等の連帶負担とする。

理由

被告人石水ハツヱは昭和十二年頃から深川郵便局の電話主任として同局電話交換手の指導監督等の事務に從事して居たものであり被告人渡〓千鶴は電話主事補として同郵便局に勤務し相被告人石水ハツヱを補助して交換手の指導及監督をして居たものであるが昭和二十二年十二月十五日全國逓信労働組合深川支部が執行委員会を開き近く施行せられる筈の一般業務監査延期二、八ケ月分の生活補給金即時支給北海道地方労働委員会調停案急速実施等各要求する件に付翌十六日同局男子宿直室で職場大会を開催する旨決定し該決定に依り支部長藤井文雄から右の通り大会を開催するに依り平常の電話交換手の配置人員を市内係二名市外一名に減員し其余を右大会に出席せしむる樣との指令を受けるや翌十六日午前九時頃被告人両名は相謀り旭川納内妹背牛滝川等各隣接局に対し深川局では本日午前九時半頃から職場大会を開くからお知らせする旨或は深川局では本日午前九時半頃から十二時頃迄職場大会を開くから呼出しても應答しない旨通知させた上当時の正規交換手の配置人員が市内係二名案内係一名市外係三名であるのを同日午前九時半頃から十一時頃迄の間前記指令通り交換手を減員して其間旭川電話局及び妹背牛納内の各郵便局からの市外通話の申込みに対し應答出來ない状態にし以て正当の事由無くして通信の取扱を遅延せしめたものである。

証拠を按ずるに判示事実中被告人両名が判示の樣な身分を有し判示の樣な事務に從事して居つた事実及判示日時全國逓信從業員労働組合石狩深川支部が判示の樣に執行委員会を開き判示の通り決議し該決議に基き同支部長藤井から判示の通り指令のあつた事実は被告人等の当公判廷で爲した判示同趣旨の供述に依つて之を認め其余の事実は檢事の被告人石水ハツヱに対する聽取書中翌十六日(昭和二十二年十二月)午前九時出勤しました其日の交換の配置は前日作つた表に基き午前十時迄は市内一席長尾区三席明石第二第四席は無配置市外一席竹内第二席淸水同第三席無配置第四席加茂谷案内岡下で右配置員及主事補渡〓千鶴原田明月の計十名が日勤者として出て居た」「私は平素斯樣な会合(職場大会)に定時励行しない事を知つて居るので多分十二時位迄かかるだろうと推測した上主事補渡〓千鶴と相談の上市内二名市外一名残した外は出席せしめ樣と決心し私から一同に其旨を傳へましたそして尚市外担当者には各担当回線先に深川では午前九時半頃から多分十二時頃迄職場大会を開きますからお知らせしますと連絡する樣指示しました通話を待つて欲しいと云ふ事は特に附言しませぬでしたが其意味は一般通話は其間待つて欲しいと云ふことです連合軍通話は如何なるときでも優先的に取扱する樣な指示がありますので局員は良く知つて居りますからそれは除外するものであることは右指示に含んで云つた積りですそして居残者に付いては市内に岡下と長尾を市外には竹内を指名したのでありますが後でその通りにして居ない事が判明したのであります」旨の供述記載証人沢リヤ子の当公廷で爲した「昨年(昭和二十二年)十二月十六日九時三十分頃と思ひますが深川局から今日職場大会が今から午前十二時頃迄あるので其間は呼出しても應答しませんと云ふ連絡がありました」「午前十時三十分頃までに通話の申込みが二、三通たまつたので困ると思ひ午前十時五分頃から四十五分頃迄の間二三回呼び出してみたのですが全然應答がありませんでした」「其日出勤してから職場大会を開くと云ふ通知のある迄に何回であつたか記憶がないが深川局を呼出しましたが直ぐ應答ありましたが其通知のあつた後は應答がありませぬでした」「午前十一時過ぎと思ひますが電話で職場大会が済んだ旨の連絡があつた」旨の供述証人熊谷由紀子の当公判廷で爲した昨年十二月十六日午前九時三十分頃深川郵便局から職場大会があるから重要通話は受けるが一般通話は待つて欲しいと云ふ通知があつたので其旨を多田さん(主事補)に告げて交替の者が來たので私は休憇室へ行つたので其後のことは判りません」「深川から職場大会があると云ふ連絡のある前深川を呼び出したことがあるが其時は普通で別に故障したとか其他接続出來ない樣なことはありませんでした」旨の供述証人佐々木〓子の当公判廷で爲した「私は小樽回線を担当していたのですが十時頃隣の四席にCICから通話の申込みがあり隣席の交換手が多忙の樣であり連合軍関係の通話は優先して接続することになつて居たので私が手傳つてやつたのでありますがそれが深川を申込んで來たので回線をみたところヂヤツクに埋線が差し込まれていましたが故障の掲示がないので回線故障にしては変だと思ひ乍ら呼び出して見ましたしかし應答が全然なかつたのでそのまま断つたところ其後又CICから電話が來て深川が出なければ納内を通じて連絡して呉れと申されたので納内を呼び進駐軍から深川警察署え通話の申込があつたがこちらからは呼出しても應答がないから貴女の方から呼んで見て下さいと賴みましたところ納内局から今日九時半から深川局では職場大会をやつているので幾ら納内から呼んでも出ませんと云ひました」旨の供述証人多田トキの当公判廷で爲した「午前九時三十分頃ではないかと思ひますが私は熊谷さんから間接的に聞いたのですがなんでも深川局の方で職場大会があるので其間重要通話は取り扱うが一般通話は待つて貰ひ度いと連絡して來たのです」「一應深川局え確めて見ましたが同趣旨で職場大会の開催時間ははつきり判らないが午前九時三十分頃から午前十二時頃迄かかるのではないかと云う返事でしたので早速赤川主任さんに知らせた上電話部の監督に報告し関係の交換手に通知した上自分で埋線致しました」旨の供述証人丸山三千代の当公判廷で爲した「昨年十二月十六日午前九時半頃深川局からこれから職場大会があるからお知らせしますと云つて來ました何時迄大会があると云ふ事は云ひませんでした」「十時ちよつと過ぎて未だ交替しない前に加入番号三十一番の厚生病院から札幌へ申込みがあり深川へ中継を依賴する爲呼び出しましたが全然應答がありません時間の記憶はありませんが其時相当長く呼んで居りましたが全然應答がありませんでした」旨の供述と檢事の証人竹内千枝子に対する聽取書中昨年十二年十六日私は午前九時出勤して市外一席に付きました当時出勤者は主任以下十名でした九時二十分頃石水王任は一同に向ひ九時半から十二時頃迄掛るだろうが職場大会があるから市内二名市外一名を除いて皆出席して下さいそして隣接局には九時三十分から職場大会ですから應答出來ませんと掛けて下さいと指図し私は妹背牛に其旨掛けました納内と音江は話中でしたから九時半過ぎ岡下と交換するとき音江納内に連絡する樣に申して置きました」十時半岡下と交替する爲に席を離れて市外台に着きました岡下からは深川受付市外発信三枚程留めてあつた発信交換証の引継ぎを受け更に職場大会が終つた時迄受付けた発信交換証五通をその儘にして置きましたそれは石水主任から発信しなくてもよいかと聞いた処よろしいと云はれたからであります」旨の供述記載檢事の証人岡下千鶴子に対する聽取書中昨年十二月十六日私は午前九時出勤して案内台に付きました日勤者は私共十人でありました九時五分頃石水主任から今日午前九時頃から十二時頃迄男子宿直室で職場大会があるから出席して下さいそして私は居残りを命ぜられ市内台に付き九時四十分竹内の依賴で市外台に変りました尚石水から市外台の人に大会があるからお知らせしますと云ふ樣に各局に連絡する樣に指図がありました私が竹内と交替するとき音江納内には通知してないから連絡して下さいと云はれたので四十二三分頃両局を呼び出し九時三十分から十二時頃迄職場大会があるから其の間呼ばないで下さいと申しました九時五十分頃旭川から呼んで來て連合軍通話は出來ますかと尋ねるので出來ますと答へて置きましたそれから暫らくして石水主任が帰つて來たので右の旨報告して置きました十時半頃竹内が交替しますと云つて帰つて來たので同人に讓り休憩室に入りました九時四十分頃から十時半頃迄深川から市外発信の申込が二、三通位ありましたが他局に待つ樣主任が指示したのだから発信も差控へて良いと思ひ交換証の整理をした丈で竹内に引継ぎました」旨の供述記載を綜合して之を認める仍て判示事実は其証明十分である。

法律に照すと被告人等の判示所爲は電信法第三十六條刑法第六十條に該当するから同條所定刑中罰金刑を選択し其所定罰金額の範囲内で被告人石水ハツヱを罰金百円に被告人渡〓千鶴子を罰金五十円に処し刑法第十八條に依り被告人等が右罰金を完納することが出來ないときは被告人石水ハツヱを二日間被告人渡〓千鶴を一日間各労役場に留置すべく訴訟費用は刑事訴訟法第二百三十七條に則り全部被告人等をして連帶負担せしむべきである

尚弁護人は被告人等の所爲に依り具体的に電話通信を遅延せしめたと謂う結果を生ぜしめた事実が無いから被告人等の本件所爲は犯罪を構成しないものである旨主張するも電信法第三十六條は通信の事務を取扱ふ者が正当の理由無く通信を遅延せしめる樣な行爲を爲した場合は之を処罰する法意であり敢て具体的に通信を遅延させた結果が発生したことを要せないものであると解すべきであるから此の点に於ける弁護人の主張を採用することが出來ない又弁護人は被告人等の所爲は全國逓信労働組合と逓信大臣との間に締結された労働協約第二十二條に則り右労働組合深川支部が深川郵便局長の許可を受け該許可に基く右労働組合深川支部幹部の指令に從つて爲されたものであるから労働法第一條第二項刑法第三十五條に依り処罰してはならないものであると主張したけれども弁護人主張の右労働協約に依れば勤務時間中の労働組合の活動は業務に重大な支障のない限り局長が之を認めると規定されて居り前記認定の通り市外通話の取扱が出來ない樣な状態に陷らしめた被告人等の所爲は通信の事務に重大な支障を來したものであることは勿論であり仮に深川郵便局長が右の樣に市外通話の取扱を停止する樣な行爲を許可し之に基き組合幹部が被告人等に其旨指令し被告人等が右指令に基き本件行爲を敢行したとしても深川郵便局長が右の樣な計可を與へることは不当であり同郵便局長以下労働組合幹部が被告人等と共に電信法第三十六條の責任を負はねばならないのに止まり被告人等の責任を減免するものではないのみではなく証人杉浦菊雄同鳴海政衞の各証言に依れば当時深川郵便局長は電話通信の事務に付いては事務に重大な支障を來さないことを條件として許可したものであり市外通話の取扱を停止する樣な措置を取ることを許したものでないことが明かである從つて被告人等の本件行爲の如きは労働爭議として行う場合は格別單なる組合運動としては最も急速なる処置を必要とする電信電話の事務に從事する者の行爲として労働組合法第一條第二項刑法第三十五條の適用ある正当な労働組合運動の範囲に属するものと認めることが出來ないから此の点に於ける弁護人の主張も亦採用することが出來ない

仍て主文の通り判決する

(判事 滝沢正)

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